第149章 失控する

今の状況では、事を荒立てるのは得策ではない。

御影星奈は直接羽瀬響也に電話をかけ、専属医を連れてくるよう頼んだ。

電話を切った後、御影星奈は隣に立つ謝部綾人に視線を向けた。

男の顔には冷たい色が浮かんでおり、普段目にする穏やかな様子とは全く異なっていた。

先ほど見た、あの獰猛な表情は……。

すでに跡形もなく消え去っている。

まるで、それがただの幻覚だったかのように。

思考を現実に引き戻す。

御影星奈は瞳に浮かんだ複雑な色を隠し、冷淡に言った。「ここで彼を見張っていて。羽瀬さんが来るまで」

彼女は洗面所へ行きたかったのだ。

先ほど瀬央千弥に噛まれた箇所が、どうにも気持ち悪い...

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