第173章 またまた詰まった

夏川中嶋の言葉が男の耳元で響く。

彼は気だるげに瞼を上げると、その漆黒の瞳は深く、そして冷ややかだった。

次の瞬間、謝部綾人はふっと笑みを漏らした。

「それも、奴にその能があっての話だがな」

御影星奈は、必ず手中に収める。

瀬央千弥?

せいぜい身の程を弁えることだ。

……

御影星奈は英子に三十分ほど付き添ってから道観へと戻った。

謝部綾人が紳士的に彼女のために車のドアを開ける。その一挙手一投足に育ちの良さが滲み出ていた。

山の上の風は強く、彼女の黒髪を乱れさせる。

蒼白で整った顔立ちは、夜の闇の中で一層人を惹きつけ、特にその切れ長の目は、こちらを見つめる時、尽きることの...

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