第175章 世論を利用する

女の声は鐘のように大きく、英子の手を掴むと、力任せに引きずっていこうとした。

しかし、夏川中嶋も馬鹿ではない。

即座に京村明里の腕を叩きつけ、彼女が手を離した隙に英子を背後へと庇った。

英子は恐怖で全身を震わせ、夏川中嶋の手を握るその手には、じっとりと汗が滲んでいた。

夏川中嶋は片手を空け、彼女の肩を慰めるように叩くと、冷たい顔で京村明里と、その後ろに控えるカメラを担いだメディア記者たちに視線を向けた。

【あれが英子ちゃんか。前に見たときよりふっくらしてるね、可愛い】

【可愛くたって意味ないでしょ?実の弟を助けようともしないなんて、将来は恩知らずになるんじゃない?】

【ただの適...

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