第35章 出浴図の主人公

御影星奈はその場で一転がりし、的確にそれを躱した。

目の前の陰気が一つの塊に凝縮し、その正体ははっきりと見えない。それは続けて御影星奈に攻撃を仕掛けてくる。

しかし、これらの攻撃は御影星奈の目には、まるで体を掻いてもらっているかのようにしか映らなかった。

彼女は避けながら呪文を詠唱する。すると、一度は消えたはずの封魔剣が東から高速で飛来し、背後からその陰気の塊を打ち砕いた。

甲高い叫び声に、怒気が混じる。

御影星奈はすっと立ち上がり、その眼差しは氷のように冷たい。荒々しい夜風が、彼女の解き放たれた長い髪を吹き上げた。

彼女は布袋から素早く、磨かれた石を数粒取り出すと、陰の塊の周囲...

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