第36章 瀬央千弥、御影星奈が好きになったの?

男の痩軀が、雨の帳の向こうへと消えていく。

御影星奈の瞳に面白そうな色が浮かんだが、すぐに視線を外し、九体の野良鬼の方へと歩み寄った。

雷鳴はすでに遠退いている。

ただ、しとしとと雨だけが降り続いていた。

女は傘を差したまま、彼らの前に立つ。

彼らの纏う陰気は、先ほどまでの濃厚さを失っていた。

御影星奈の陣によって抑え込まれ、逃げることもできず、ただ屠殺を待つ子羊のようにその場に留まるしかない。

九体の鬼はそれぞれに特徴があった。

この恐ろしい容姿なら、お化け屋敷でも開けば大ヒットするかもしれない、と御影星奈は思った。

「このクソ道士、一体何がしてえんだ! 俺たちは誰も傷つ...

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