第49章 葉山立夏、楽しんでいるか?

彼女は傘を差し、濡れた石畳の上をあてもなく歩いていた。

足元の水たまりは軒先の提灯の淡い光を映し出し、彼女の足音に踏み砕かれては、また静かに集まる。

雨の湿った匂いと苔の生臭さが混じり合い、鼻腔を突き抜けて、胃の奥から激しい吐き気を催させた。

彼女は壁に手をつき、ゆっくりとしゃがみ込んだ。額には冷や汗が細かく滲み、全身を襲う痛みで目の前が明滅する。

ただ息抜きをするための口実を作って出てきただけなのに、まさかこんなことになるなんて……。

路地の入り口にある『老舗漢方薬局』の看板を目にし、彼女は壁を伝いながら、少しずつそちらへ足を運んだ。

葉山立夏が、すり減って滑らかになった敷居を...

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