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ケイン視点

張り詰めた議論の余韻が、まだ空気中に重く漂っていた。俺とテッサは、薄暗い廊下を伝って医務室へと戻っていった。

戦略会議での重苦しい時間のあとでは、建物全体に響く静かな稼働音が、どこか非現実的なものに感じられた。

俺の頭の中では、戦略や不測の事態への対策が渦巻いていた。だが、隣にいるテッサの存在が、俺の意識を「今」へと引き戻し、地に足をつけさせてくれる。

俺たちは静かに進み、石の床に足音だけが柔らかく響いた。俺は彼女を横目で見た。テッサは落ち着き払っていたが、その内面では不安の嵐が吹き荒れていることを俺は知っていた。その時だ、突然の混乱が襲ってきたのは。

角の向こう...

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