第六十五章

ケイン視点

夢ではなかった。

頭の中でガンガンと鳴り響く痛みは現実のものだ。それは、ぼんやりとした悪夢の一部でもなければ、俺の肩を乱暴に揺さぶる荒っぽい感触も幻覚などではない。鋭く、切迫した声が、脳にかかった霧を切り裂くように響いた。

「ケイン! ケイン、起きやがれ、クソッ!」

俺は唸り声を上げた。身体は鉛のように重く、動くのを拒んでいる。俺をこんなふうに揺さぶる相手を叩こうと、闇雲に腕を振り回した。

「クソが、いい加減起きろってんだよ!」

苛立ちに眉を寄せ、まだ休息を求めて抗う俺に、相手は荒々しく悪態をついた。

背中のベッドはあまりに柔らかく、温かすぎた。こ...

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