チャプター 96

ケイン視点*

キオンのパックで合流して以来、一日はまるで靄(もや)の中で過ぎ去っていった。

その半分も覚えていない。少なくとも、まともには。圧倒的な疲労のせいで記憶は断片的だったが、それでも俺はなんとか持ちこたえていた。

暖かい屋敷の中にいるというのに、ロシアの風の冷たさが、まだ俺の肌や服にまとわりついていた。

あらゆる重圧で思考が滲(にじ)んでいた――彼女を取り戻した安堵感、ここロシアでのディミトリの暴虐な支配を終わらせたこと、そして故郷で経験したどんな争いとも違う激戦を生き延びたこと......。

サーシャはすぐに屋内へと運び込まれ、ストレッチャーに乗せら...

ログインして続きを読む