第13章:どの谷本さん

「谷本さんがいないなら、私はこれで失礼します。皆さん、どうぞお楽しみください」

佐久間博は風のように現れ、贈り物を渡すとすぐに去っていった。残された人々は呆然としていた。

小宮健司は手にカードを持ちながら、咳払いをして尋ねた。「誰か谷本さんを知っている人はいるか?」

皆は首を振った。アリネアレストランの社長が直接来て、食べ物や高級な酒を持ってくるような人物は、彼らのレベルでは到底知り合えない。

「もしかして谷本純平?」

誰かが皮肉を込めて言うと、皆は一斉に笑い出した。

「冗談だろう。あの役立たずがそんなことできるわけがない。もしそうなら、この瓶を飲み込んでやるよ」

「俺たちの義...

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