第2章

花宮薔薇視点

朝の光が防弾ガラスを突き抜け、この豪華なタトゥースタジオに差し込んでいたけれど、私は少しの暖かさも感じなかった。

どんなに内装が豪華だろうと、監獄は所詮クソみたいな監獄だ。

目が覚めて最初にしたのは、全てのドアと窓の確認。防弾ガラス、電子ロック――換気口でさえ、ネズミ一匹がやっと通れるくらいの大きさしかない。

「くそっ!」

重いガラスのドアに全体重をかけて押してみるが、びくともしない。

「お嬢様、お部屋にお戻りください」

ドアの外に黒いスーツのボディガードが現れ、その声はロボットのように冷たく機械的だった。私はそいつを睨みつけた。視線だけで殺せたらいいのに、と願いながら。

「ここから出して!これは不法監禁よ!」

ボディガードは感情なく繰り返した。

「お部屋にお戻りください」

怒りに任せて振り返ると、戸口に寄りかかり、あの鋼色の瞳で私を見つめる黒羽赤司がいた。黒のシャツに着替えていたが、相変わらず地獄のように冷たく危険な雰囲気を漂わせている。

「よく眠れたか?」

その口調には心配の色が滲んでいるようにさえ聞こえたが、そんなもの見せかけに決まっている。

「くたばれ!」

私はためらいなく言い返した。

黒羽赤司は中に入ってきて、スタジオ全体を見渡した。

「仕事の時間だ。だがその前に、セキュリティチェックを行う必要がある」

「セキュリティチェックって、何よ?」

「シャツを脱げ。作業環境の安全を確保する必要がある」

まるで天気の話でもするかのように、彼は平然と言った。

瞬間、頭に血が上った。

「ふざけるな!私はあんたの玩具じゃない!」

このクソ野郎、私を辱めるつもり?死んでもごめんだ。

「なら、別の方法を試そう」

黒羽赤司はゆっくりと自分のシャツを脱ぎ、引き締まった胸と腕を露わにした。

「俺が君の最初の客だ」

私は凍りついた。彼の体にはいくつかの古い傷跡があったが、その肉体は彫刻のように完璧だった。クソ、こんなことに気づくべきじゃないのに!

「胸に、薔薇のデザインだ」

彼はタトゥーチェアに腰掛け、冷たく命令を下した。

拳を握りしめ、爪が手のひらに食い込む。

「断るわ」

「ならば監獄を選ぶがいい」

その冷たい顔を見つめ、内なる怒りが頂点に達した。だが、今ここで抵抗しても自分の状況が悪化するだけだと分かっていた。

「いいわよ」

私は歯を食いしばって言った。

「でも、手元が狂っても知らないから」

薔薇のデザインが欲しい?ならくれてやるわ、地獄の薔薇を。あんたを苦しめるためだけにデザインされた、一本一本の棘をね。

私はデザインを始めた。意図的に一つ一つの棘をより長く、より鋭く。彼が薔薇を望むなら、血の滴るようなそれをくれてやる。

インクを混ぜ終えると、刺青機のスイッチを入れた。針が彼の肌に触れた瞬間、一彫りごとにわざと深く押し付けた。

「ん……」

黒羽赤司がほとんど聞こえないような呻き声を漏らした。

ハッ!痛いか、この野郎?

「痛みます?痛み止めでも要ります?」私は偽りの気遣いを見せながら、心の中では狂ったように笑っていた。

「続けろ。痛みは怖くない」

彼の声は平静を保っていたが、その下に隠された緊張が聞き取れた。

その強がりがいつまで続くか、見ものね……。

私は作業を続けた。針の一突き一突きが、私に復讐めいた満足感をもたらす。でも、彼の心臓のあたりに近づくにつれて、彼の体温と、空気中の奇妙な緊張感をより強く感じるようになった。

私たちは、あまりにも近すぎた。

角度を調整しようとしたとき、私の手は誤って彼の背中の方へと滑ってしまった。

その時、何かに触れた。

「この傷……」

私は衝撃で手を止めた。

「嘘……なんて深い傷……」

傷跡はまるで痛みの地図のように彼の背中を縦横に走り、何か鋭利なもので何度も切りつけられたかのようだった。いくつかはとうに癒えていたが、それらがもたらしたであろう苦痛は今でも感じ取れる気がした。

「そこに触るな!」

黒羽赤司は突然、感電したかのように体を跳ねさせ、私を強く突き飛ばした。

作業台に叩きつけられた私は、驚愕して彼を見つめた。

彼が、怯えている?この冷血漢が、本気で恐怖を感じている?

その瞳には、怯えた子供のような、今まで見たことのないパニックが宿っていた。その瞬間、私の目に映ったのは傲慢な債権者ではなく、深く傷ついた誰かだった。

「誰にやられたの?」

言葉は、止める間もなく口からこぼれ出た。

「黙れ!」

黒羽赤司は激昂して叫んだ。

「てめえには関係ねえことだ!」

でも、私の好奇心は完全に掻き立てられていた。

「その傷、まるで――」

「黙れと言っただろうが!」

彼は私の手首を乱暴に掴んだ。その握力は痛みを伴う。今度こそ、彼の瞳には本物の怒りと……そして、恐怖が見えた。

怒りが恐怖を上回った。私はテーブルからタトゥーニードルを掴み、ためらうことなく手首を掴むその手に突き立てた。

「離して!」

針は彼の手のひらに深く突き刺さり、鮮血がすぐに噴き出し、刺青機の上に滴り落ちた。

私たちは二人とも凍りついた。

手に握られたままの血まみれの針を見つめ、私の感情はめちゃくちゃに混乱していた。

なにを……私、何てことを……。彼を、刺してしまった……。

黒羽赤司は私の手首を離し、自分自身の手のひらの傷を見下ろした。血がゆっくりと滴り、刺青機の金属の表面に奇妙な模様を描いていく。

不思議なことに、彼は怒りもせず、反撃もしなかった。ただ静かにその血の滴を見つめ、その瞳には私には理解できない複雑な感情が宿っていた。

彼は……悪魔のようには、見えなかった……。

「ごめんなさい……」

その言葉は口から出て、自分でも驚いた。

黒羽赤司は私を見上げた。あの鋼色の瞳には、今までにないほどの脆さが浮かんでいた。

「謝る必要はない」

彼の声は柔らかかった。

「痛みには……慣れている」

刺青機の上で、血はゆっくりと凝固し、壊れた薔薇の形を作っていた。

心臓が激しく鼓動していた。恐怖からではなく、名付けようのない感情のせいで。

私を監禁したこの男は、一体どんな痛みを隠しているんだろう?そして、私は自分の暴力によって、自分が最も軽蔑していた存在そのものになってしまったのだろうか?

私は混乱し始めていた。

多分、私は彼のことを、思っていたよりもずっと知らなかったのかもしれない。

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