第6章

 五年。

 サンフランシスコのテンダーロイン地区にあるワンルームのアパートから、ゴールデンゲートブリッジを見晴らす角部屋のオフィスへと上り詰めるのに、それだけの年月がかかった。向かいに座る経済誌の記者は、その裏側など知る由もない。彼女の目に映っているのは、ただのサクセスストーリーだけだ。時価総額5000億円のAI不動産評価会社を一代で築き上げた、若き天才技術者という虚像である。

「五年前、あなたは何も持たずにニューヨークを去りましたね」二人の間に置かれたレコーダー越しに、彼女は言った。「今やアリアAI不動産の価値は五千億円です。どうやって成し遂げたのですか?」

 私は練習通りに微笑んで...

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