第35章 あなたの前妻の求婚者は本当に多い

森遥人が出国して以来、鈴木莉緒は自分の住まいに戻っていた。

彼との結婚はまるで夢のようで、目が覚めれば、当然何も残ってはいない。

実のところ、森遥人はいい人だった。

ただ、彼女には自覚があった。森遥人が自分に何の感情も抱いておらず、それどころかひどく嫌っているということを。

もう、どうでもいいことだ。

彼女が心から願っていたのは、ただ森遥人が生きていてくれること。

今、その願いが叶い、彼女は満足していた。

四月の空は、あまり雨が降らなくなり、花が咲いては散り、万物が瞬く間に移り変わっていく。

鈴木莉緒は普段通り出退勤し、週末は同僚と街へ出て、食事をしたり、買い物をしたりした。

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