第70章 キス

鈴木莉緒は俯き、その薄情そうな唇に口づけを落とした。

柔らかな感触は、まるでトンボが水面を打つかのよう。ほんの一瞬触れただけなのに、幾重にも波紋が広がっていく。

鈴木莉緒の心臓はどんどん高鳴り、彼女はさっと身を引いた。頬が熱い。

視界の端で森遥人の耳元が少しずつ赤くなるのが見え、彼女はごくりと唾を飲み込み、下唇を噛んだ。森遥人が自分を責め立てるのを待っている。

森遥人は一度唇を引き結んだ。心のざわめきを無理やり抑えつけ、喉仏が動く。視線を彼女の足へと移すと、薬を塗られたそこは艶やかに光っていた。

意外にも、二人はどちらも何も言わなかった。

森遥人はさらにしばらく彼女の足を揉んでから...

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