第60章

温水希は606号室に入る勇気がなく、斉藤に酒を持って行かせた。

帝都はこんなに大きく、人口も六百万人もいるのに、彼女はまさかこの男とまた出会うとは思わなかった。

六階にはたくさんのウェイターがいて、VIPの個室は全部で六つある。

しかし、ここでは特定の個室に固定されることはなく、ウェイターは皆流動的だ。山本月が言ったように、競争があってこそやる気が出る。固定の個室に分けてしまうと、仕事が怠けてしまうからだ。

温水希は時間を確認し、トイレに向かった。

トイレから出てきたところで、酔っ払った客が突然ふらふらと出てきた。中年の男で、腹が出ていて、酔っ払って大声で叫んでいた。「誰...

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