第100章 美味しい小魚の唐揚げ

当初、大村さんの表情は余裕そのものだった。

長年囲碁に打ち込んできた彼は、めったに好敵手に出会うことはない。岡本凜太郎の年齢からして、プロの棋士でもない限り、自分の相手にはなり得ないだろうと高を括っていたのだ。若者相手に最初から本気を出して追い詰めるのも大人げないと思い、手加減をして穏やかに打ち進めていた。

ところが、盤上の戦いが進むにつれ、大村さんの眉間には深い皺が刻まれ、その眼差しは次第に鋭さを増していった。考慮時間も長くなっていく。

一手を打ち終えたところで、大村さんはたまらず問いかけた。

「若いの、なかなかやるな。なぜプロの道へ進まなかった?」

岡本凜太郎はほとんど思考時間...

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