第116章 説明を聞いて

岡本凜太郎は山口夏美を抱きかかえたまま、かなりの距離を滑走した。山口夏美はおずおずと体を動かし、「もう下ろしていいわよ」と告げる。しかし、岡本凜太郎に止まる気配はない。彼は腕の中の少女を見下ろすと、わざと体を揺らしてみせた。驚いた山口夏美が反射的に彼の肩にしがみつくのを確認してから、彼は平然とした声で言った。

「今は無理だ」

山口夏美はまだ動悸が収まらない様子で、しばらく沈黙してから口を開いた。

「いい加減に下ろさないと、怒るわよ」

人を抱えたまま減速するのが難しいとしても、抱えたまま滑るほうが簡単なはずがない。岡本凜太郎は明らかにわざとやっているのだ。彼女が本当に腹を立て、顔...

ログインして続きを読む