第127章 救援

クルーズ船が港に到着するまで、あと一日。

その日の夕暮れ、船長のロスはまさに錨を下ろして停泊しようとしていた。その時、ふと望遠鏡を覗いた彼の目に、そう遠くない海面で点滅する救難信号の明かりが飛び込んできた。ロスは直ちに投錨作業を中断し、山口豪への報告に向かう。この海域は航行する船が少なく、通信状態も不安定だ。そのため、救難信号を見つければ可能な限り助け合うのが海の掟である。それは、自分たちが不測の事態に陥った際、誰かに助けてもらうためでもあった。

ロスから事情を聞くと、山口豪は即座に現場へ急行することを承諾した。自船の安全確保を大前提としつつ、できる限りの援助を行うつもりだ。ロスは豪...

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