第130章 棋局を解く

「山口夏美、これわかる?」

二宮結菜が盤面を覗き込みながら尋ねる。彼女は囲碁という競技の存在こそ知っているものの、ルールまでは学んでいない。ゆえに、助け舟を出すことはできなかった。

山口夏美は真剣な眼差しを盤上に注いでいた。現状は白番が優勢で、黒番は風前の灯火といったところか。この詰碁(つめご)の意図は、黒が次の一手でどう動けば形勢を逆転し、勝利を手繰り寄せられるかにあるのだろう。

「やってみる」

脳内で思考を巡らせ、彼女は慎重に頷いた。だが、いくつかの手順をシミュレーションしてみても、決定打には欠ける。白がミスをしない限り、どうあがいても相手の勝ち筋なのだ。

十数分ほど長...

ログインして続きを読む