第84章 約束

パーティーがお開きになった後、岡本凜太郎は山口夏美を家まで送り届けるところだった。窓の向こうに山口家の明かりが見えてきたその時、不意に岡本凜太郎が口を開く。

「俺、今日は助け舟を出したよな」

山口夏美は車の窓を開け、顔に残るほのかな酒気を夜風で散らしていた。兄と「お酒は飲まない」と約束していたのだが、中村雅子との会話が弾んでつい忘れてしまっていたのだ。彼の言葉を聞き、彼女は岡本凜太郎の方へ振り返ると、小首を傾げて尋ねた。

「じゃあ、今度ご飯をご馳走するわ」

岡本凜太郎は前方を真っ直ぐ見据え、真剣な表情でハンドルを握ったまま、軽く首を振った。

「二人きりで招待してくれるのか?」

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