第九十章 犬の散歩

木下七海は不満げに口を尖らせた。

「だって、北村由紀があんなに貧乏なのが悪いのよ。あんな高い靴、彼女に買えるわけないってみんな思うでしょ? 私たちが疑うのも当然だわ。結子を責めないでよ」

中島結子は大げさに彼女を睨むふりをした。

「もう、やめてよ七海。……北村由紀さん、今回は私が悪かったわ。お詫びに豪華なディナーをご馳走するから、この件は水に流してくれないかしら?」

北村由紀は呆れたように白目をむき、嫌悪感を露わにして彼女を見据えた。

「誰があんたの奢りなんて喜ぶのよ。私は『目には目を』主義なの。全校生徒の前で謝るか、それともトイレ掃除をするか、どっちかにしなさい!」

中島...

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