第92章 ヒロインと侍女

その時、竹中萌香が声を張り上げた。

「もちろんよ。伊藤健とママはすごく仲がいいんだから。ドラマでも共演してるしね。小さい頃から会ってて、ママに言われて『伊藤おじさん』って呼んだら、飴をくれたりしたわ。ママは、学校の斡旋なんか待たなくても、私が演りたくなったらいつでも手配してくれるって言ってるの。でもね、あと二年は勉強したいのよ。演技をもっと磨いてからデビューする。それが自分に対する責任だし、観客に対する責任でしょ」

木下七海はわざとらしく頬に手を当てて、羨望の眼差しを竹中萌香に向けた。「キャーッ! 萌香のママってすごすぎ! さすが、かつての伝説的な絶世の美女ね。私もそんなお母さんが欲し...

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