第40章 この食事は食べなくてもよい

佐藤桜は携帯を手に取って確認すると、確かに北兄からのメッセージだった。

【桜、こっちで仕事の急用が入ってね。先に食べててくれ】

来られないようだ。

北兄は医者だから、急用というのはおそらく病院の方の用事で、人命救助が優先なのだろう。

彼女は携帯を置くと、隣にいる林田隼人を見た。「食べましょう」

林田隼人はグループチャットで、林田北一郎が道中で交通事故に遭遇し、車から降りて救助に向かったため来られないと愚痴っているのを既に見ていた。来ないほうがいい、妹の取り合いをしなくて済むからな。

程なくして、料理が運ばれてきた。

林田夕子は箸を取り、目に笑みを宿して言った。「私たちも食べまし...

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