第50章 早く林田さんに席を譲る

中村司の顔に余計な表情はなかった。「離婚すれば問題が解決すると思っているのか?」

「お婆さんのことは、私が手術を受けるよう説得します」

男は細い目をわずかに細めた。「何を根拠に彼女を説得するつもりだ?」

佐藤桜の表情がわずかに硬くなった。「それはもう、あなたが気にすることではありません」

そのとき、病室のドアが開き、中川さんが出てきた。「奥様、おばあさまが司様とご一緒に中へ入るようにとおっしゃっています。お二人にお話があるそうです」

林田夕子が傍らに立ち、微笑みながら言った。「私もおばあさまにお見舞いに来たんですよ」

中川さんは素っ気ない口調で答えた。「申し訳ございませんが、おば...

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