第109章

アヴリーヌ

ルナの視線を追った私の心臓は、嫌な音を立てて跳ねた。案の定、オリオンは私が残してきたブース席で突っ伏していた。黒い髪の頭を腕にうずめている。遠目にも、彼が完全に意識を失っているのが明らかだった。

「おやおや」ローランがもっとよく見ようと身を乗り出しながら言った。「まさしくオリオン・ブラックウェルだ。しかも、すっかり酔いつぶれているようだね。彼にしては珍しい――あの男は普段、伝説的なほどの自制心の持ち主なんだが」

オリオンの意識のない姿を見つめていると、奇妙な感情の波が押し寄せてきた。こんな状態に陥った彼への苛立ち。そして、なんだかんだ言っても、彼のことを心配せずにはいられない...

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