第二六章

ヴィヴィアン

どっと安堵が押し寄せ、崩れ落ちそうになる体を支えるために椅子の背を掴んだ。脚からすっかり力が抜けてしまっている。

ニコライが窓に向かってそれとなく合図を送ると、ずっと私を捉えていた赤い点がふっと消えた。通りの向こう側のどこかで、スナイパーがライフルを片付けているのだろう。

「本当に……私を生かしておくつもり?」意図したよりもずっと弱々しい問いかけになってしまった。

彼の表情は、まるで道徳的なパラドックスに悩む哲学者のように、心底思案に暮れたものに変わった。「素晴らしい質問だ。そしてそれは、私を実に厄介な立場に置くものでもある。君を殺せば、この一連の暴力沙汰に満足のいく終止...

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