チャプター 89

アヴェリン

意識がゆっくりと浮上してくる。それに伴って、頭が割れるような頭痛と、飲み物に盛られたのであろう薬の金属的な味が口の中に広がった。最初に抱いたはっきりとした思考は、何かが、とてつもなくおかしい、ということだった。

私は窓のない小さな部屋らしき場所で、上体を起こしたまま座っていた。両手首は背後できつく縛られ、腰の周りにはロープが巻かれ、重厚な木製の椅子に固定されている。その縛り方はプロの仕事だった。血の巡りを止めるほどきついが、恒久的な損傷を与えるほどではない。この犯人は手慣れている。

だが、私の血の気を引かせたのは、真正面に三脚で立てられたカメラだった。その赤い録画ランプ...

ログインして続きを読む