第十五章

その場の空気は、突如として現れた数台の黒塗りのセダンと、それに続くパトカーの列によって一変した。

車列の出現に、野次馬たちは呆然と立ち尽くした。

官僚であるトムは、アウディやパサートが高官の公用車として採用されていることを熟知していた。だからこそ、車列の先頭を行くのがアウディA6だと見て取った瞬間、彼の顔色は蒼白になった。

視線がナンバープレートに吸い寄せられ、心臓が止まりそうになった。「GH001」だ!

トムは雷に打たれたような衝撃を受けた。顔には恐怖が張り付き、心は戦慄に支配された。

一般人には知る由もないことだが、トムはこの「GH001」がターディ市長の専用車であることを知っていたの...

ログインして続きを読む