第二十六章

ネイサンは、華奢で小さな妻の無事な姿を目にして初めて、喉元までせり上がっていた心臓が元の位置に戻るのを感じた。今すぐ彼女に長く情熱的なキスをしたいという衝動に駆られたが、周囲には人が多すぎた。そこはキスをするのにふさわしい場所ではなかったのだ。彼は持参した果物の入った袋をレックスのベッドサイドに置いた。そしてヒルダのそばを通り過ぎる際、恐怖に震えていた彼女を慰めるように、その大きな手を伸ばして彼女の髪を撫でた。

ヒルダは見るからに痛々しい様子だったが、ネイサンに髪を撫でられると、恐怖に支配されていた小さな心臓が一瞬にして癒やされたようだった。

ネイサンが果物の袋を枕元に置くと、レックスは感...

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