チャプター 25

その時、薄暗い照明に包まれたバーは、大勢の客でごった返していた。レックスとヒルダは店内に足を踏み入れた。

ヒルダの美しい顔はわずかに青ざめていた。ネイサンの姿はどこにもなく、レックスは依然として彼女に執拗にまとわりついている。その瞳には、不安と深刻な色が色濃く浮かんでいた。

これから直面するであろう困難、そして終わりを迎えようとしている自分の人生を思い、ヒルダは身震いした。

「ヒルダ、何をそんなに怯えているんだ?」

ヒルダの強張った様子に気づいたレックスは不満げに言った。彼の眉間には深い皺が刻まれていた。

ヒルダは彼に向かって微笑み、甘い声で答えた。

「いいえ、怯えてなんかいませんわ。た...

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