第二十六章

群衆の中で、ヒルダだけが心底愉快そうに笑っていた。彼女は人垣の外で、腹を抱え、テーブルをバンバンと叩きながら爆笑していたのだ。

「アハハハハ!」

静まり返った会場に、その笑い声が響き渡った。さきほどまでどんな顔をすればいいのか戸惑っていた招待客たちも、まるで笑いのスイッチを押されたかのようだった。やがて、会場のあちこちから押し殺したような笑い声が漏れ始めた。

ダニエルは発狂寸前だった。群衆の中で誰よりも高らかに笑っているヒルダを睨みつける。彼はギリギリと歯を食いしばり、怒鳴り声を上げた。「警備員!警備員!どいつもこいつもどこへ行ったんだ!」

警備員たちは、まるで夢から覚めたかのように我...

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