チャプター 275

ヒルダはそう言い捨てて立ち去った。

カルメンは引き下がるしかなかったが、ヒルダはそのままオフィスへと向かった。

退社間際、ヒルダのもとに予期せぬ来客があった。アンソニーだった。

オフィスに到着し、仕事やその他の雑談をしばらく交わした後、夜も更けてきたため、ヒルダは解散を促した。

ところが、アンソニーは不意にこう切り出した。

「ヒルダ、法的扶助の申請を手伝おうか? ターディ市の法曹界には顔が利く知り合いが何人かいるんだ」

ヒルダは訝しげに彼を見つめた。

なぜ藪から棒に法的扶助の話などするのだろう?

アンソニーは少し言い淀んでから説明した。

「君の父親が君を売り飛ばすような真似をして、醜い...

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