第283章

その時、バタンと大きな音を立ててドアが開き、ネイサンが戻ってきた。

ベッドの上でただ静かに涙を流していた彼女は、自分のもとへ駆け寄ってくる彼の姿を見て顔を上げた。彼はベッドの端に腰を下ろすと、小さな箱を置き、蓋を開けた。中には炎症と腫れを抑える薬が入っていた。

彼は一言も発することなく、ヒルダの体に薬を塗り始めた。どうやら彼は、薬を取りに行っていただけだったようだ。

彼女自身は気づいていなかっただろうが、明かりが点いた瞬間、その傷を目にしたネイサンは心臓が止まる思いだった。インクと血が滲むタトゥーに加え、首筋には見るも無惨な爪痕が幾筋も刻まれていたのだ。

ヘックスがどれほどの力で掴めば、...

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