第289章

こんな写真が存在していたなんて知らなかった。ネイサンがこれらを全部保存していたなんて信じられない。彼にとって、この写真はとても大切なものみたいだ。

ネイサンの指先がそれらの写真を軽く撫で、ヒルダの愛らしい顔の上で止まった。「現像した写真のほうが好きなんだ。保管しやすいし、いつでも見たい時に見られるから」彼はそう説明した。

夜も更けてきた。ネイサンはヒルダが眠りにつくのを待ち、さきほど隠した写真を取り出して元の場所に戻した。

その写真は、彼が軍を退役し、投資と起業の道を歩み始めた後に撮られたものだった。クレモン・グループに入り、実権を握った頃のことだ。

ネイサンには金銭的な不自由など微塵...

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