チャプター 36

数人の取り巻きを引き連れて、一人の女性が近づいてきた。仕立ての良いドレスが、彫刻のように均整の取れた肢体を際立たせている。磨き上げられた大理石の床に、ヒールの音が鋭く響いた。

「嘘でしょ……」ヒルダは息を呑んだ。また彼女だ。店に現れた瞬間、その場の空気を一変させ、全員の視線を釘付けにしたその女性は、他でもないカルメン――彼女の妹だった。いや、義理の妹だ。そしてカルメンのすぐ隣に立っているのは、さっきレストランの前で揉めた相手、グロリアだった。

カルメンはモデルとして、芸能界では名の知れた存在だ。一方のグロリアも、サンチェス・エンターテインメント・メディアの社長として、社交界の花形たちの間で...

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