チャプター 377

三秒が経過したが、狙撃手はまだ引き金を引いていなかった。

同時に、四方八方から足音が響き渡った。その音から判断するに、数十人はいるだろう。数台の車が、すでに現場への入り口を封鎖していた。

一台の車が、ヘックスのリーダーとヒルダの目の前で急停止した。ドアが開き、黒のトレンチコートを纏った男が降り立つと、二人の前に立ちはだかる。

その男の姿を認めると、ヒルダは驚きと歓喜に目を見開いた。彼女の目に映ったのは、他ならぬネイサンの、端整だが厳格な面持ちだったからだ。彼の瞳には、激しい怒りと殺気が揺らめいている。憎悪してやまない男を見つめるネイサンの内側で、憎しみが大きく増幅していくのが感じられた。...

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