チャプター 397

目の前に立つ白衣の男を見つめながら、ヒルダはまるで千年の時を遡ったかのような感覚に陥った。煌びやかな通りの提灯の明かりの下、この上なく美しい男が佇んでいる。眉間に施された朱色の化粧が彼を一層眩しく見せており、その浮世離れした魅力と比類なき美貌を前にすれば、どんな女性でも抗う術なく恋に落ちてしまうだろう。

それはまるで、何百何千という人混みの中を探し求め、ふと振り返った瞬間に、仄かな灯りの下に佇む彼を見つけた――そんな運命めいた光景だった。

男のあまりの美しさに、ヒルダは息をするのも忘れてしまった。永遠とも思える時間、頭が真っ白になり、ようやくの思いで視線を外す。幸い、強い照明のおかげで顔の...

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