第五十七章

以前、映画スタジオで、衣装を身にまとった彼女が自撮り棒を手に道端に立ち、誰とでも気さくに写真を撮っている姿を見かけたことがあった。彼もまた彼女と写真を撮りたいと思い、そばに歩み寄って、ようやく同じフレームに収まることができたのだ。あの時は、すべてが輝いて見えた。しかし残念ながら、そんな魔法のような時間は、泡沫の夢のごとく弾けて消えてしまった。リナックスは慎重に写真を置くと、仕事へと意識を戻した。

ヘックスはあの爆発した飛行機に乗っていた。爆発後、機体の残骸は山中の無人の森へと墜落した。理論上、ヘックスがあの墜落から生き延びることは不可能だ。だが、リナックスの胸には依然として不安が渦巻いていた...

ログインして続きを読む