第581章

その場にいた全員が、完全に言葉を失っていた。

受付の二人も同様に驚愕していた。そこはターディ市のリング・アベニューだ。一平方メートルあたり少なくとも四、五万は下らない高級地である。

それをレックスは、彼女たちの「恐怖を和らげるため」だけに譲ろうとしているのか?

翌日、全員が不気味なほど定刻通りに出社した。昨晩の事件に怯えて辞める従業員など一人もいなかった。仕事中も、昨夜の受付嬢への「お詫び」に関するニュースがないか、誰もが常に聞き耳を立てていた。

昼になると、二人の受付嬢がマンションの契約書にサインしている様子をSNSのストーリーにアップしているのが確認できた。

誰もがその事実に愕然...

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