第593章

サハラは国民的な人気を誇るスポーツスターであるだけでなく、ダミアン家の令嬢でもあった。そのため彼女の周囲には数多くのボディガードが配置されており、彼らは即座にテヒラを取り押さえ、脇へと放り投げた。

ダミアン夫人は恐怖に震えるサハラを抱きしめ、優しく慰めた。その姿は、まさに仲睦まじい母娘そのものだった。

テヒラは信じられない思いで、泣き叫んだ。

「ママ、私よ、テヒラよ! 私が本当の娘なの。その女は嘘つきよ!」

たとえ父が騙されたとしても、自分を腹を痛めて産んだ母だけは騙されないはずだと、彼女は信じていたのだ。

ところが、ダミアン夫人は今までテヒラが見たこともないような厳しい表情で彼女を見下...

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