第649章

手術は順調に終わり、あの親知らずは無事に抜かれた。

傷口は縫合されたものの、その大きさゆえに、ヒルダは経過観察のため二日間の入院を余儀なくされた。

病室で点滴を受けながら、ヒルダは口の中の血を吐き出していた。その傍らでは、ネイサンが半分に割れた血まみれの歯を片付けている。

彼は病室に泊まり込みでヒルダの看病をすることに決めたようだ。水を運んだり、甲斐甲斐しく様子を見たりしている。点滴が終わると、彼は氷を持ってきて、彼女の腫れ上がった頬に当ててくれた。

ネイサンが彼女の少し青ざめた顔に触れ、何か言いかけたその時、ドアをノックする音が響いた。

「あら、すごい偶然ね!」

患者衣を身にまと...

ログインして続きを読む