第七十七章

ヒルダは、小さな女の子が玄関へ近づいてくるのが見え、慌てて赤い封筒(お年玉袋)の束をひっ掴んだ。ドアを開けると、目の前にその少女が立っていた。彼女は非の打ち所のない服装で着飾り、お腹の前に下げたポシェットはすでに赤い封筒でパンパンに膨れ上がっている。

「あけましておめでとうございます! お金持ちになれますように!」

少女はとびきり甘い声で挨拶すると、悪びれる様子もなく、両の手のひらをヒルダに向かって差し出した。

ヒルダはその手に赤い封筒を乗せ、「あけましておめでとう」と返した。

目当てのものを手に入れた少女は、すぐに立ち去ろうとした。ヒルダは無意識に引き止めようとしたが、急なことで口実...

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