チャプター 86

これは夢に違いない。いや、夢であってくれ。俺の思い過ごしであってほしい。クリスには何か他に片付けなきゃならない用事があって、だからこそ目立たないように動くことにしただけかもしれない。俺が考えているようなことであるはずがないんだ。

カイルはそんな思いを脳裏に巡らせながら、クリスの居場所へと続く道をひたすら尾行していた。

一方、クリスは動揺し、自らの犯した罪への後悔に苛まれており、尾行されていることになど全く気づいていなかった。後ろを確認することすらなく、ただひたすら車を走らせる。片手でハンドルを握り、もう片方の手の指を口にくわえ、爪を噛み続けていた。

彼は裏切りと後悔の狭間で引き裂かれそう...

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