第959章

ターディ市も九月に入ると気温が下がり始め、ジェロームが物件探しに乗り出すには、ようやく過ごしやすい気候となっていた。

事の重要性を鑑み、彼は自ら市内の物件視察に乗り出したのだ。何と言っても、彼女が最終的に選ぶ場所が、この国におけるスミス・グループの支社となるのだから。

ターディ市には、名の知れた風水の大家が片手で数えるほどしかいない。ジェロームはそのうちの一人を招き、物件巡りに同行してもらうことにしていた。

ちょうどその時、サミュエル・フレミングがホバーボードに乗って現れ、道行く人々の注目を集めていた。彼は長い黒髪をきっちりとポニーテールにまとめ、優雅なローブを身に纏っている。冷たい風に...

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