第960章

仲介業者は車をゆっくりと走らせ、三番街から旧王宮の方へと案内した。

家選びは長い道のりだった。特にジェロームのような大口の顧客にとってはなおさらだ。彼はここ数日あちこち見て回っていたが、気に入る物件には一つも巡り合えていなかった。

仲介業者はターディ市選りすぐりの高級住宅を案内したが、彼の眼鏡にかなうものはなかった。旧王宮エリアでさえ、スミス市にある彼の自宅と比べれば劣っているため、興味を引くことはなかったのだ。

ここ数日、サミュエルは彼に付き合わされて目が回るほど連れ回されていたが、金のためと割り切ってジェロームの後をついて回っていた。何しろ、これは半日の仕事に過ぎない。毎日午後二時か...

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