チャプター 991

長年、彼は無意識のうちに、その封印された記憶について考えることを避けてきた。しかし、今年に入ってから、彼はある夢を見るようになっていた。

突然、もう一度ターディに行きたいという衝動に駆られたのだ。ターディの景色を眺め、ターディの料理を腹一杯食べ、そしてターディにいる「誰か」に会いたいと。だが、自分が誰に会いたいのかさえ、彼自身にもわからなかった。

こんな感情は初めてだった。ターディから戻って以来、その想いは唐突に現れ、日増しに強くなるばかりだった。

「お父様」

雪を眺めながらあずまやに座っていたジェロームのもとへ、不意にアーロが歩み寄ってきた。

ジェロームは気怠げに目を開け、こう言っ...

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