第994章

ルナは歌い終えると、アンソニーの正面に戻った。そして子供らしいあどけない声で尋ねた。

「おじちゃん、串焼きもう一本ちょうだい」

アンソニーは眉をひそめた。

「もう食えねえよ。ほら、ママが迎えに来たぞ」

ルナはすぐにヒルダの姿を見つけると、嬉しそうに駆け出した。

「ママ!」

アンソニーは座っていたベンチから初めて立ち上がり、目を細めてヒルダを見つめた。二、三歩前に進み出たが、彼が何かを言う暇もなく、大勢の部隊がなだれ込み、その場で彼を取り押さえた。

結局、アンソニーが誘拐罪に問われることはなかった。

ルナが「おじちゃんが遊びに連れて行ってくれた」と証言したため、彼はあっさりと釈放されたの...

ログインして続きを読む