第996章

ヒルダがシャワーを浴びている間、ネイサンは犬を抱きかかえ、一人と一匹は互いに見つめ合っていた。まるで食パンそのものだ。なんてブサイクなんだ。

その時、リナックスが立ち上がって言った。「アンソニーをアフリカの研究所に送り返すつもりだ。今のうちに別れを告げておくといい」

ネイサンはうつむいたまま、黙って犬を撫で続けた。

ほどなくしてシャワーから出てきたヒルダは、ルナの姿が見当たらないことに気づき、家じゅうをひっくり返す勢いで探し始めた。

「ルナはどこ? 私の赤ちゃんはどこへ行ったの?」

物思いに耽っていたネイサンは、ハッと我に返り、ずっとそばで遊んでいたはずのルナがいないことに気づいた。...

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