第31章 バカ

北野美月と山崎霧の間の距離は、いつの間にか縮まっていた。静寂の中で心臓の鼓動がより一層鮮明に聞こえてくる。北野美月の頬は微かに赤く染まり、胸の内は緊張と期待で満ちていた。

「山崎霧……」彼女は小さな声で呼びかけた。その声には少しの緊張が滲んでいた。

「心配しなくていい」山崎霧の眼差しは優しくも確かなもので、ゆっくりと彼女に近づき、指先で彼女の頬に触れた。その温もりに北野美月の鼓動は加速した。

その瞬間、山崎霧は顔を下げ、そっと北野美月の唇に口づけた。

北野美月の胸の内に動揺が走る。緊張しながらも、まるで世界がこの瞬間に静止したかのように、彼女は身を委ねた。彼女の手は無意識に山崎霧の首...

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