第64章

設計図が次々とテーブルに広げられる。一瞥するだけで、そのデザインのインスピレーションの源泉と鍵となる要素がすぐに分かった。

声の仕事もデザインも、元々はただの趣味だった。たとえわずかな収入が得られたとしても、藤堂彰人の前で自慢するつもりはなかった。

『彼が知るはずはない』

なにしろ、彼に私のデザインを見せたことは一度もないのだから。

デザイナー「槐」も、スタジオでは取るに足らない存在に過ぎない。

「だとしたら妙ね。彼がそんなに投資してくれたのって、まさか私の仕事の能力を見込んだわけじゃないでしょ」

結城柚希は皮肉を込めて言わずにはいられなかった。「私みたいな人間が、どうして藤堂社長...

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